「お前…本当にアホだな」
俺は呆れてため息を吐いた。

「は、はぁ!?なんだよいきなり!」
「いやだって…。あと、それにその話のどこが良い話なんだよ。ただの自慢じゃねーか」
「ふん!確かにそうだが、こっからだったんだよ。お前への話は」

「一体なんだ…」

「実は、お前に頼みたい事がある」
「頼み?」
「ああ。俺、この前気付いたんだよ。小坂さ…いっつもなんか隠してる」
「なんかってなんだよ」
「だからさー、それを純が調べてきてくれよー」
「なんで俺が!なんか知らねーが気になるんなら自分で調べりゃいいだろ」
そう俺が言うと日郎は「やだよ。聞きづらい」と小声でつぶやき、プイッとそっぽを向いた。
「…そんなんで本当によくデートに誘えたな」
「それとこれとは話が別だ。お願いだ。小坂になに隠し持ってんのか聞いてきてくれよ」
「そこまで気になんの?」
「ああ。いっつも授業中、小坂の顔が下向いてて、なんとなーく覗いて見たらなんか手元にくたびれたメモ帳、ずっと眺めてたんだよ。まるで暗記でもしてるかのように。…ありゃ絶対…ラブレターだ」
「本当かよ」
「だーかーらー。それを調べてきて欲しいって言ってんだよ!お前なら、俺より小坂と話したことあるから言ってくれるんじゃないかと思って…」
「ええー。」
「頼むよー、もし本当にラブレターだったらデート前に嫌じゃんかよー」
「…」
「ああ、なら、分かった。もし聞いてきてくれたら今週と来週の荷物運び、無条件で俺が運んでやるよ。どうせまた純が負けるだろうしな。だから頼むよー」

「…うーん、マジで荷物運びやってくれるの?」
「ああ、もちろん聞いてきてくれたらな」

なら…一回くらいいっか…
と俺は心の中で思ってしまった。

「じゃあ、分かった。聞けるタイミングがあったらな」
「おお!マジで!サンキュー!今週の日曜日に行ってくるからそれまでに頼む!」
そう言うと日郎は立ち上がり「次の教科係だから」と言って教室を出て行った。

まったく…なんて自己中なやつだ。