夢の国 〜ホントの気持ち〜


キーンコーンカーンコーンー…

「チャイム?」
「わ!うわ!ヤバイヤバイ、授業始まっちまうよっ!」
俺は急いでダンボールみたいな荷物をかついだ。
くそ…重いなっ
数学の教師は短気で有名で、たとえ準備で遅れてこようが容赦なく怒る。
相手が女であっても平気でぶったりする、最低昭和おやじだ。
こんな荷物を持っていれば、このまま急いでも遅れるのは確実だが、
小坂は…
「なあ、小坂!急いで教室行った方がいいぞ?数学の教師、めちゃくちゃ厳しいから!」
「え…」
「あ、あとついでに、そいつに『十和野は遅れます』って言っといてくれ」
「だ、大丈夫なの?」
「遅れるのは俺だけでいいさ」
教材室前の廊下には俺たち以外誰もいなかった。なぜ小坂はこんなところにいたのかというのが今更の疑問だが、まあ、今はどうでもいい。
小坂はなぜかポカンと口を開けて俺を見ているだけで、
急いだり焦ったりはしなかった。
「おい、何してんだよ。いそげよ!小坂まで怒られっちま……」

フワッ
なんだか急に荷物が軽くなった。
見ると、小坂が反対側から荷物を持っていてくれていた。

「私も手伝う!私も…一緒に遅れる!」