それから約10分、あたし達は他愛ない会話を楽しんでいた。
しかしーーー
話している途中で、凛人がいきなり口を右手で抑えた。
「……ゔっ…」
「だっ、大丈夫⁈」
凛人の骨張った、大きな左手をぎゅっと握る。
その手首には、あたしとおそろいのウサギのブレスレットがつけられている。
その左薬指には、あたしと同じ、シルバーの指輪が光っている。
それから、凛人が口を抑える右手をゆっくりと離して、ゆっくりと息をする。
「…っはぁ……はぁ…」
「大丈夫…?」
あたしはもう1度尋ねる。
「あぁ」と凛人は微笑んだ。
すると凛人は、小さくあくびをした。
「……あー眠い」
「!」
凛人がよく言っていた口癖。
「俺、また千尋の側で寝ないと、ダメ、かも……」
凛人の声が震えている。
……ねぇ、なんで、また震えてるの……?
「……そっ、か。じゃあ、1回寝よ?」
凛人の手をぎゅっと握り締める。
こんな弱々しい凛人を見たのは初めてだった。



