マフラーを、見られない様に鞄の中に忍ばせ、あまり履き慣れていないミュールを履く。
どうだ!とばかりに勢いよくドアを開ける。
「やった!」
まだ凛人は来ていなかった。
「さすがに45分前には来ないか〜」
あたしは苦笑いしながら、玄関前のちょっとした階段に腰を下ろす。
「今日はいい天気だね〜♪」
空に向かって話しかける。
聞こえてる?
お父さん、
お母さん。
………これで何回目の移動だろうか。
さっきからなんとなく落ち着かず、階段と庭のベンチを往復し続けている。
腕時計に視線を落とす。
「……14時」
未だ凛人は来ない。
……あ。
もしかして、どこかに隠れてる?
あたしを驚かそうとして。
意地悪な凛人だからやりかねない。
閃いたあたしは家の周りをぐるっと一周。
細かいところも探した。
………でも、
「いな……い」
珍しく寝坊かな…?
寝てるって言ってたけど、よく寝れてなかったっぽいし。



