ー「伝えれば、伝わるやつには伝わんだよ。俺の気持ちは、ちゃんとあいつに伝わった」
凛人………っ
ー「足りなかったんだよ、気持ちが。あいつはちゃんと伝わるやつ…」
凛人が言い終わる前に、あたしはたまらなくなってドアを開けた。
真っ先に走って行くのは、
もちろん、大好きなあの人。
そして、ぎゅっと背中に抱きつく。
大好き、大好き、大好き…っ
「ちっ、千尋⁈」
凛人の驚いた声が聞こえる。
「…千尋」
涼介があたしを呼ぶ。
あたしは凛人の背中から離れて、涼介に向かい合う。
「千尋」
涼介がまたあたしの名前を呼ぶ。
隣で、凛人はあたしの手を握ってくれている。
伝えなきゃ。
ちゃんと、今の気持ちを。
「ごめんなさい。あたしは、凛人が好きです」
言えた………!
「あの時は、あたしは涼介が好きだった。でも今は違う。あたしが好きなのは、市原凛人です」



