お母さんが、薄っすら目を開けた。
「……ち…ひろ………」
掠れた声で、お母さんがあたしの名前を呼ぶ。
そして、あたしの手を握り返してくれる。
「お母さん……っ」
息が、どんどん……浅く…なってる………
嫌……
お母さん、すぐに元気になって家に戻ってくるよね?
ね?
そうだよね…っ?
病室にお医者さんが入ってきた。
あたしはお医者さんに駆け寄った。
「お母さんは…っ、助かりますよね⁈また家に戻って来られますよね?」
頷いてほしかった。
お医者さんは、黙ってしまった。
「…出来るだけの処置はしました」
お医者さんが言う。
出来るだけの、って、お母さんは助からなきゃいけないんだよ?
あたしはお医者さんの白衣を掴んで
「助かりますよね⁈助かるに決まってますよね⁈」
と叫ぶ。
お願いだから、頷いてーーー



