男の子はぶつけた頬をさすりながら右手の人差し指をヒョイと上に上げた。

すると…地面からまた蔓が、男の子はその蔓にまたがり上昇しキラキラした目で言った。

「だってさ~この力凄くね?伸びたり、縮めたり、細くしたり、太くしたり!!」

私は一度記憶喪失の事は忘れて、男の子の操る【力】について考えてみた。
この切り立った崖の広場は下はゴツゴツした岩だらけなのだ。私が出てきた森から崖の先端までは多分10メートル強って所で、扇形の広場。
その岩だらけの下から植物を生成して成長させている。無から作り出している。

「確かに凄い、私も目の前で見るのは初めて、これが……法力。」

「法力?」

男の子が上から疑問符のついた顔でこっちを見ているのだろうけど、逆光で表情はわからない。

「知らない?不治の病を治したり、水中の上を走ったり、雨を降らしたりと、選ばれた者だけが扱える力の事よ」

「へースッゲエな!そんな力を俺が…」

蔓を縮ませ男の子は下に降りてきた。

「なぁ俺としばらく一緒にいてくんねーかな?色々教えてほしいんだ!」

「はぁ?何であたしが…」

男の子はキラキラした目で、また少年のような屈託のない顔をしてる。この子からはまるで邪気を感じない。
まぁ少しの間はいいか、困っている子供は性分的にも放っておけないし!

「私はロズテック、ロズでいいよ!面倒みるのは、少しの間だからね!」

「おぉサンキュー、ロズ!色々よろしくな!」

「じゃとりあえず腹拵えね。行くわよナナシ!」

「ナナシ?」

「名が無いからナナシ!」

昔飼ってたオウムにトリちゃんと名付けた私のネーミングセンスは健在だ。
ともあれ私とナナシは暫くこの山で共同生活をする事になった。期限を決めた訳じゃないけど、あの子が自分の名前位思い出すまでは一緒にいてやりたいと思った。