「分身の私相手に苦戦しているのに、ロズ・テック公に分身で力を分けて、勝てると思ってるんですか?」

不気味男は返す。

「1人位付けとかねぇと戦いに巻き込まれて死んじまうわなぁ…へっへっへ…ペドロ。高僧と呼ばれるてめえも、哀れな女1人の命は気にもならねぇか?」

火の男も返す。

「あなたはあの時と変わらない。まだ眠っているべきだ。」

また不気味男が喋る。

「何したって変わりゃしねぇよ。俺は商人でてめぇは汚ぇ漁人だ。それに…」

「あの人に付いて行けばいずれ出生するると踏み、てめぇを始め他11人も右大臣、左大臣。欲にかられたクズ共だよてめぇ等は。」

火の男の肩から火の鳥が生まれ凄いスピードで不気味男Aの左肩に着弾した。左腕が吹っ飛び、爆風で私も飛びそうになったが、例のBが私を庇ってくれた。
不気味男Aはニタ~と笑いながら、千切れた肩の先端から枝や蔓を伸ばし、なんと左腕を再生させてしまった。

顔は火に包まれて解らないが、おそらく怒っている。火の男がまた喋り出す。

「私は信仰が強かったたけです。」

不気味男Aは長い髪を邪魔くさそうにかきあげ言う。

「ほう…こりゃまた…おもしれぇ。てめぇがあの人を裏切った事、俺が知らねぇとでも…へっへっへまぁいいか、とにかくてめぇはいつも笑かしてくれる。
エルサレム宮に乗り込んだときも、老いぼれたロバにまたがる【あの人】を見て、ヨハネを抱き抱えたままわぁわぁと泣き、まるで天国が目の前に現れたような有様。
 神の国の福音とか言うデタラメをあの人から伝え聞いては、欣喜雀躍しているてめえは、噴飯ものだ。」

「わからない。私達ならいざ知らず、【主】の事まで…。あの裏切りは前から計画していたものなのですか?」

不気味男は顔付きが変わる。

「当然だ【主】…奴だけは生かしちゃおけねぇ。」

「あの~…」

ここで私だ。こんな訳のわからない状態で勝手に話を進められても困る。間に入るタイミングじゃなくたって構うもんか!