この声、記憶に…ある。

「誰だ…てめぇは…」

頭の痛みはいっそう激しさを増す。だが気配で何かが目の前に現れた事はわかった。だが俺はそいつを見ない。

そいつを誰だか知っているからだ。見たらきっと、俺は全て思い出すだろう。
求めていた記憶。それが突然手に入る。なんとも言えない虚脱感に覆われる。それが手に入ったらまた、新たに目標を作らなければならない。早いよ。こんな事ならまだ見つからなくていいのに…。記憶を求める側と、それを拒否する側が自分の内面にいる。自分は後者だったと今更ながら思う。

「この山を選んだのには意味があるんです。普通の人では絶対に奥まで入って来れないのに…。」

「何んだと…?」

こっちの事なんてお構いなしに喋り出しやがった。

「私の法力で、この山に入る者達に幻覚を見せるようにしてあるんです。その人なりに1番怖がっているものを。ある人は神、ある人は鬼、悪魔。なのにあの少女は入ってきた。なぜ?おそらく…」

少女?ロズの事か?この野郎俺のロズに何かしようってのか!

俺は目を見開いてそいつを見た。

見てしまった。

火の鳥達がそいつの回りを飛び回ったり、肩の上で羽の掃除をしていたり、とにかくそこら中にいる。

けっ!

これでこの山に何がいるかハッキリしたじゃね~か。これからは入口に火ノ鳥山とでも看板出しとくんだな、ペドロよ。




俺は記憶を取り戻した。

もう頭も痛くない。

ただ…

ただ…

心が渇いている。