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み……える…

見えるよ!凄い!本当に見える!

「やったー!!じゃじゃあこれは?!」

自分でも半信半疑だ。

「人参にジャガイモにー…アカリの花!」

「おお完璧だ!治ったんだ!ロズ良かったなー!!」

俺はあらかじめ用意した、ロズの好きな香りのする花束をあげた。

「ありがとう。ナナシのお陰だよ。まさか本当に治せるなんて…なんてお礼を言ったらいいか…」

ロズが涙ぐんでる。今はまだ花の香りを楽しむヒマはないみたいだ。

「お礼なんていらないよ。ロズには俺の方が助けられてるんだから。」

本当に心からの気持ちだ。ロズが居なかったら俺は、今だにこの山から下の景色を眺めているだけだっただろう。自分が商人だった事も思い出せず、廃人のようにただボーっと生きていただけだ。ロズが居たから、記憶喪失の恐怖も、1人の孤独も感じずにすんだ。

これから先もこの山で協力して生きて行こう。危険な事は全て俺がやる。ロズは側に居てくれるだけでいい。たまに俺が採ってくる花や魚を見て、喜んでくれれば良いんだ。

「まだしっかり目を開けられない。眩しい。」

「そりゃ1ヶ月半位日の光を見てなかったんだから仕方ないだろ~。」

気の早い話だが仕方ないかな。そうだ!今日の晩飯は豪勢にしよう!とっておきの食材を探してくるぞ!ロズの手料理も久しぶりだ。ワクワクするな~!

「そうだよね!でも本当にありがとね。これで村に帰れるわ。」

ん?今何て。

「……かえ…る?」

「そう!言ったでしょ。幼い兄弟がいるの。私が面倒みて家の事も手伝わないと。ナナシも来るでしょ?村の人達や私の家族に紹介させて!」

「え、あ…うん、そうだね。ロズの村かぁ、緊張するなぁ、あ!ちょっと小便!したかったんだ俺は。ちょっと行ってくるよ。へへへ」

………

森に入って30mm程歩いた所で止まる。

………

…ロズは何を言っているんだ?