直感で体を捻ったのか、「何」かによる直撃は避けれた。小鹿は離さずにすんだ。だけど一体何?

「ロズ!!おい!!」

「ん…大丈夫…何が起きたの?」

前方からフーフーといきり立った獣の息使いが聞こえる。もしかして!

「シーカーが突然ロズに突進したんだ!」

やっぱり。きっと自分の子供を私が抱いてたから、取られたと勘違いしたんだ。それなら早くこの子を返そう。でもこの小鹿…さっきの衝撃で気を失ってる!そんな…!

今ナナシは葉から下りて私の横に駆けつけてくれた。私達の背後には木。その直線上にはシーカー。次の2撃目で私を殺し、愛する我が子を取り戻す気だ!

「ロズ!!腹から…血が出てるよ!」

そういえば、お腹が焼けるように熱い。やばい、結構深かったのかも…まいったな。でも私が冷静に対応しないと!

「ナナシ。法力で1度木の上に逃げよ。それでこの小鹿が起きたら離してあげればいい。」

「くそ…ロズに…何てことを…」

ナナシはぶつぶつと口を動かしてる。

「聞いてる!法力で葉を……」

その時シーカーが飛び出した。荒々しい鼻息とあらんばかりの殺意を持ってして、私達に近づいてくる。感の鋭くなった私はその禍々しい怒りに触れ。心の底こら恐怖し、声すら出せなくなった。

だけどそんな中、ふと可笑しくなってしまった。神様、悪魔、そのどちらかに運命を任せる為にこの山に登ったのに、鹿に殺されるとは。鹿だったら私の村にたくさんいたのに…馬鹿らしい。


…………


あれ?襲ってこない。


…………


弱々しい声でシーカーが鳴いてる。一体?

「ふざけやがって!たかだか獣1匹が…誰を傷つけたと思っていやがる…」

ナナシの声だ…でも何て冷たい声。

メキメキ…ミリミリ…

この音、法力で、蔓で締め上げてるんだ!

「ナナシ?どうしたの?…止めて…動きさえ止めればそれ以上は…」

「死んじまえよ。」

その瞬間私の前に温かな大量の水が掛かった。これが何か理解したと同時に、私は気を失い。血の海に倒れた。