『檸檬白書』は週刊少年誌に連載されている作品だから、あたしは読んだことがないんだけど、タイトルくらいは知っている。


「へぇ。お前でもマンガなんか読むんだ?」

なんか、彼、不思議そうな顔してるけど。

「別に、あたしだってフツーにマンガくらい読むよ」

「なんかさ、南野って“夏目ナントカ”とか“太宰ナントカ”みたく純文学系の小説とかしか読まないのかと思ったから、なんかちょっと意外なカンジする……」

「あたしって、そーいうイメージなんだ……」

「いや、なんとなく……じゃ、またあしたな」

そう言うと彼はレジのほうに行ってしまった。

「そうなんだ……ヤッパあたしって、そーいうイメージなんだ……」

ひとり残されたあたしはつぶやいた。



      ×      ×      ×



「ただいま……」

家に帰りつくなり、あたしは洗面所に走っていって、鏡に映る自分の顔を見た。

そこにはメガネをかけたあたしがいる。