「うわっ、それサイアクぅ。“ニキビ”って聞くだけでもイヤなのに、その枕詞(まくらことば)に“スケベ”がつくなんて超サイアクじゃん♪ 室井さん、気をつけたほうがいいよぉ♪」

「ハーイ、あたし、スケベだからじゅうぶん気をつけまァ~す♪」

二の腕が耳にピッタリつくように、垂直に手を挙げる室井さんだった。


ゴロゴロゴロ……。


そのとき、遠くで春雷が聞こえた。

ほどなくシトシトと降りはじめる雨。


京都の春は雨が多いそうな。

そして、いつまでも尾を引いていた寒さが、ようやくやわらいだとき、山々の桜は一斉に咲きはじめるんだそうな。

今年の桜は綺麗に、鮮やかに咲いてくれたかな?

それとも、寒さを引きずって、どこかイジけたみたいな咲き方をしたのかな……?



それはともかくとして、今日はこれから塾だっていうのに、この雨の中、足元をビチャビチャにしながら通わなくちゃいけないのかと思うと、大きな……でも音のないため息をつくあたしだった―――――