放課後、塾の時間まで余裕があったあたしはいつもの駅前の本屋さんに立ち寄った。

“室井さん”に話を聞いてもらうためだ。


室井さんっていうのは、前にあたしがスカートの中を盗撮されたとき、犯人の大学教授をケーサツに突き出してくれたヒトのこと。

あの一件以来、店内で顔を合わせる度にあいさつするようになり、今では学校じゃ話せないことなんかをイロイロ相談に乗ってもらったりするような関係になっていた。


「店長ぉ、ちょっとあたし倉庫に在庫確認に行ってきまァ~すっ」


そう言って店内をあとにすると、本屋さんの建物の裏にまわってUンコ座りをして、シュボっとライターで細いタバコに火をつける室井さん。

どう見ても元ヤンキーって感じの彼女の隣に、ヒザをそろえてしゃがむあたし。

「あたし、学級委員なんてできないよォ。あしたから学校に行きたくないよォ……」

「もう決まったことなんでしょ? いつまで文句ブツブツ言わないのぉ」

室井さんは放課後になってもまだ文句をブータレてるあたしに対してさえも、イヤな顔ひとつしないで、メガネの下の目を細めてくれるアラサーの女性。