「今度の日曜日、映画に行かね?」


……とか。


あげくの果てには……、


「8月の花火大会、いっしょに見に行かね?」


……なんて言われるんじゃないかとまで、アレコレ妄想してしまうんだ。


だけど実際は塾が終わるとそれっきり。

方向がちがうから、いっしょに帰ることもなかったし、それどころか結局ただの一度も遊びに誘われないまま夏期講習の期間が終わってしまった。

きっと夏休みが終わって2学期がはじまったら、またそれまでのようにたとえ廊下ですれちがっても、ただのひとことも交わさない、そんなタダの他人同士の関係に戻っちゃうんだろうなと思う。


結局……、


結局、夏期講習でいっしょに過ごした時間は、あたしにとってほんの一瞬(ひととき)のあいだだけ輝いて、そして消えていった、まるで真夏の夜空に打ち上げられた花火のみたいな出来事だった、ってことだ―――――