もし、あたしが北条くんみたいに「うめぇ」を連発が子供だったら、母だって料理の作り甲斐があったんだろうに、なんて思ったりもする。



……と、そのとき……、



「おんやぁ、誰かと思ったら南野千賀子じゃんか」



不意に誰かにフルネームで呼ばれた。


声のしたほうを見ると、そこにはマッシュルームみたいな坊っちゃん刈りをした男子が、クチの端でニヤリと笑って立っていた。

相変わらずムダに甲高い声だったけど、それでも声変わりをしたらしくて、最初、声だけでは分かんなかったけど、その色白の顔にはハッキリと見覚えがある。

……ってか、忘れたくても忘れられない顔だった。


「塩崎 清……」


今は別々の中学に通ってるけど、小学生の頃、あたしのことをさんざんメガネザル呼ばわりしていじめてきたヤツだ。