笑香side
私の学校は高台にある。
ここは…
この学校の屋上は、
一番町の風景がよく見える。
私の生まれ育った町。
私の…
大嫌いな町。
― ヒュー ―
冷たい風が
とても心地いい。
このまま、風になれたらいいのに。
いっそのこと
風になってしまおうか。
そんなことを考えていたとき、
「おいっ!!笑香っ!!お前こんな危ないところで何やってんだよ…。」
そういって彼はどうも走ってきたらしく
息を切らしながら
困ったような焦っているような顔をしていた。
「…海斗…。どうしたの…?」
私は振り返りもせずに
屋上のふちに体育座りをしながら答えた。
「どうもこうも、廊下からお前がこんな屋上のぎりぎりに立ってるのが見えたから…。」
「風になれたらなっって…。」
「え…?」
海斗はとても不思議そうな顔をしていた。
「なんでもない。さ、帰ろう?」
私はそういって
屋上のふちから離れそのまま
学校を後にした。
「おいっ!!笑香!!おいてくなよっ!!」
私の名前は
斉藤笑香(サイトウエミカ)
今年の4月から高校に入学した。
今は5月中旬。
体育祭も終わり、中間試験が近づいてきてる。
まぁ、私はそんなの気にしないけど。
「なぁ、笑香??」
こいつは
宮本海斗(ミヤモトカイト)
家が近いってこともあって
かなり長い付き合いになる。
私と海斗は
ほとんどずっと一緒にいた。
私は海斗に
何度も『心』を助けられた。

