でも、わざわざ自転車にのらないで私とならんで歩いてくれる、とか。


たまに見せる優しさがずるい。


「……翔」


「何?」


翔の腕をひっぱってこっちを向かせ、おでこに手をのばして――――





ばちんっ




「……、……っ、いって!」


「お返し」


キスすると思った?


残念。私は漫画の主人公みたいに可愛くないから。


「じゃ、あとでね」


同じ学校でも、芸能科に通う翔と普通科に通う私は校舎がちがう。


おでこを押さえて怒っている翔をよそに、私はさっき見つけた友達の方へ駆けていった。


いいじゃん。やり逃げばんざい。