いじわるで優しくて、大キライ

結婚して5年が過ぎた頃だ。

圭二郎よりも子供を欲しがっていた華子。

なかなか子宝に恵まれないでいた。

圭二郎は結婚もそうだったし、子供がいなくてもそれが自分の運命なのだろうと思っていたが華子が違う事はわかっていた。

その晩、圭二郎は仕事の付き合いで帰宅したのは午前2時を過ぎていた。

いつもなら、先に寝ている華子。

部屋の明かりがまだついているようだった。

静かに家に入ると、

華子がダイニングの椅子でうたた寝をしていた。

『かぜひいちゃうぞ…』

『うぅん。…おかぇりなさい…』

眠たそうな目を頑張って開こうとしている華子。

『大丈夫か?こんなとこで寝ちゃって…』

『話があったから…』

話?

寝ずに、いつ帰るかわからない自分を待つほどの話。

仕事にかまけて、妻の事をないがしろにしていた罰か…?

思い当たる節はいくらでもあった。

記念日はドタキャン。

約束は守れない。

いくら仕事のこととはいえ、その要素は多大にあった。

離婚。

子供いないし。

離婚するには十分な理由があった。

『あのね…』

『ら、来週、温泉でもいこうか?』

苦し紛れ。

ただ、話を引き伸ばすだけ。

それでも、圭二郎にはそれが精いっぱい。

『え?温泉?』

『うん、温泉。どこがいいかかんがえておけよ』

そう言いながら、寝る雰囲気をつくり出す。

上着を脱ぎ、ネクタイを緩める。

『シャワーするから、先に寝てろよ』

いぶかしい顔をしている華子。

『シャワーの前に、聞いて?』

シャワーの前でも後でも、結論同じじゃないのか??

そんなに、今、言いたいのか??

『別れる気は、ないぞ』

『赤ちゃんが出来た!』

それは2人、殆ど同時だった。

そして、同じタイミングで、

『え?』

『なに??』

数分後、先ほどの神妙な空気は、喜びへと変わった。

良かった。

良かった。

本当によかった…

なぜか、自分でも気がつかないうちに

圭二郎は泣いていた。

それを見て華子も泣いていた。