そして、正直を言えば、まともに高校生活など送ってもいない自分の将来はもはや消えかけていた。

それでも、悠は最期にまた、勝ち取った。

センター試験。

合格の通知。

ひとまず、安心して残りわずかな学校生活を送ればよかったのに。

なんでこんなことになったんだ。

暴行事件。

はっきり言って、覚えていない。

思い出したくもなかった。

しかし、なにもかも失ったから…。

さすがにこれは適当に生きてきた悠でも落ち込んだ。

『はぁ。しかたねーよな』

人間、上手く生きるには

受け入れることが必要だ。

そうは頭で考え思っても、心がついていかない日をただいたずらに過ごす。

あの日、警察に捕まってからのことをはっきりと覚えてはいないが。

自分の部屋の前で、泣きながら叫ぶ父親の声ははっきりわかっていた。

『なんでだよ。悠!なんで、こんなことになったんだっっ!!!』

オヤジ。

それは、俺も知りたいよ。

俺も。

どこに、もどったら、

こうならずに済んだ…?

どこに戻っても、結局はこうなっていたんだろうか?

戻るとか、戻らないとか、

そんな不確かな事を言っちゃってる自分がありえない。

時は、戻らないから。

一度、溢れた水は

二度と、そのコップには、戻れない。

少しづつだけれど、今の状況を受け入れる事に慣れてきていた。

いつか。

いつになるか、わからないけれど。

いつか、全てを受け入れることができたなら、

もしかしたら、

溢れた水を、コップに戻すことができるんじゃないのか…?

いつまでも、父親の声が悠の中に響き渡っていた。