『今日こそいてよねぇ』

そして、今日も会えない。

いや、このままではまずい。

今日は遅くまで粘ってみよう。

まだ、20時だ。

エントランスのソファに座っていると、向こうからイチャイチャした若いカップルが歩いてきた。

カップルはなにかこそこそ話しをしたかと思うと。

『あのー、あなた部屋まちがてますよ。あなたが押したの俺の部屋だから』

黒いレザージャケットに、細身のジーンズ。

ニットキャップをかぶっていて、ヘアスタイルはわからなかった。

男は遥の回答を待たずに、先に待ってる彼女の元へ向かう。

『大丈夫だった?やっぱり、悠の知らない人?』

悠。

アサダ ユウ。

『ん?たぶんね。間違い間違い。行こう』

彼だ!!!

二週目にして、やっと会えた!!

しかし、また、出かけられてしまった。

そして、22時過ぎ。

遥はそのまま、ソファでウトウトしてしまった。

『おい…』

ぼんやりと頭上から、声が聞こえ聞こえる。

なにやら、少し笑っているみたいな…、優しい声。

『風邪ひくぞぉ?おい』

遥はモヤっとする眠気を必死に振り払う。

『誰のこと待ってんだよ。何時間も』

男は笑っていた。

『あ、あなたです!!』

男は飲みかけの缶ビールを吹き出した。

遥はカバンからハンカチを差し出す。

吹き出したビールを一通りふきおえる。

男は、

『じゃあ、とりあえずいこうか…』

遥は招かれるまま、エレベーターにのる。

10階のボタンを押す。

『どうぞ』

部屋に入ると、ソファの上には、出来事が終わったそのままの感じが残っていた。

匂いや、そのままぬぎっぱなしの彼の衣類。

タオルとティッシュペーパー。

遥はその雰囲気を、感じ取りダイニングテーブルのある壁際の方に立っていたのだ。

彼は、ソファの方へ座ると遥にも座りなよといった。

遥はダイニングの椅子に腰掛けようとすると、

彼はソファの隣を叩き。こっちだよといった。

『こっちでいいです』

ダイニングチェアに腰掛けようとしたその次の瞬間。

遥の背中は、彼に覆われた。

ドンッ!!!

ものすごい音が鳴る。