そして、高校3年。

以前として、悠と涼の会話はほぼなくなっていた。

父親ももう、悠の事は諦めがついたようだった。

悠はほぼ登校もせずに、立派な問題児としてここ私立のおしとやかな高校界隈では有名になっていた。

そして、事件が起きたのは、大学の入試の始まる1月。

涼は附属高校生から、推薦で大学の進学が決まっていた。

父親も一安心し、悠については、涼と同じようにはならないことも理解していたし、このまま無事に卒業まで静かにして欲しい。

それが本音。

その日、涼は疲れて帰宅していた。

誰にも会わずに、部屋へ急ぐとそのまま布団を被りひたすら寝た。

ひどく、疲れてきっていたのだ。

朝方、父親が部屋の中に入ってきた。

『涼、警察に行ってくる』

父親の表情は青ざめていた。

朝方。

冬の朝は暗い…。

『浅田 悠の父親です。この度は本当に申し訳ございませんでした!!』

『どうぞ、こちらです』

面会室へ入る父親。

『オマエ、お前…なんで…』

悠は、父親と顔も合わせようとせず、父親の問いかけにも終始無言を決めていた。

面会室を出ると、父親は警察官に

『このあと、息子はどうなるんですか?』

『まぁ、相手もたいしたことないという事ですし、調書とったらご帰宅で構いませんよ。あとは、示談になるのか。ならないとなると少し面倒ですがね。息子さんも、最初は話さなかったけど、いまはきちんと話してくれるし。なにかあればご連絡いたします』

悠が釈放されたのはそれから2時間ほど。

朝になっていた。

悠は警察官に頭をさげると、父親の車に乗り込んだ。

『なんでこんなことになった?』

『きちんとしゃべれ』

父親の問いかけに、

『腹へったなぁ。昨日からなんも食べてないんだ…』

父親はファミレスに連れて行くと、モーニングを二つ頼んだ。

『頂きます』

無言で二人とも平らげた。

『親父。ごめんな。期待はずれで。最期まで』

『もう、いいさ。…俺も悪かったんだ』

『本当にゴメン』

自宅に着くと、悠は先に車からおりそのまま部屋にこもってしまった。

警察官から預かった、悠の少ない荷物を父親は整理していた。

携帯電話と、サイフ。

サイフの中には、3000円と、なにやらしろい紙が入っていた。

父はそのちいさく札と同じサイズにたたまれた紙をひろげる。


そこには、センター試験。
一次合格。

の、文字。

なんだって…?

これはどういう事だ…。

名前は??

浅田 悠殿。

父親の声が、悠の部屋の元で鳴り響いた。

『悠!悠!!』

ロックしたドアが開く事はなかった。

そして、涼だけが、父親の期待に応える事ができたのだ。