中学2年。

悠に変化が起き始めていた。

学校へ行かなくる。

気分で登校し、気分で休む。

悪い先輩仲間ともつるむようになった。

悠の素行が悪くなるたびに、涼はホッとしていた。


テスト。

一番でなくても、自分のまえに悠の名前はない。

満点じゃなくても、その点数を悠に越されることはない。

良かった。

本当に良かった。

『また、あいつ学校いってないのか??』

時に父親の錨が爆発した。

それでも、そんなことはもう涼には関係ない。

『僕、塾行ってくるよ』

せっかく僕がいい成績を残しても、結局父親は悠のことを気にしている。

なんで??

いつものように塾へ向かう途中で、いつもは寄らないコンビに寄り道をした。

『悠ー!!久しぶり!なんで電話でないのー??』

少し年上に見えた。

高校生の綺麗な女子生徒だ。

『メールしても返事ないしさぁ。ラインもー』

悠と間違えて話を続ける女子生徒。

『また、連絡するよ』

『なにー?ちょー、冷たいじゃん。ははは』

涼はコンビニを出ると、塾へは向かわずに、ただなんとなく、新宿の町を歩いた。

ほんとに、兄貴はあそんで暮らしている。

僕はこんなに頑張っているのに…

遊ぶ時間なんて、いままで1秒だってなかった。

涼はその日結局、塾を休んでしまった。

21時過ぎ。

『まじかーーー?』

『ばっかじゃねーの??あっはっはっ』

『うけるし』

5、6人の、うるさい男女の集団に出くわした。

「うるさい…」

『ああ??なに、オマエ??」

「うるせぇって、言ってんだよ!!!」

次の瞬間、涼よりもひとまわりほど大きな男に殴られた。

まわりがざわざわしだす。

『おいっ、ケンカしてるぞ?』

『見に行こうぜ』

似たようなやつらがわーーっと群がる。

『あいつ、…』

4、5発ほど涼が殴られたところで、

『ちょっとタイム!!』

『なんだよ、オマエは??』

『いや、もういいでしょ。コイツ弱すぎじゃん。あんたの勝ちでしょ?ケーサツきちゃうよ、あんま派手にやるとさ』

しぶしぶだが、涼を殴っていた男たちはその場を立ち去った。

涼を助けた、その少年は。

悠だった…。

『バカか、おまえ』

悠は涼の手当てを少しすると、帰るぞ。そう言って、自宅にもどり。

もちろん、父親からの追及には

『馬鹿野郎っっ!!なんてことしてるんだっっ!大丈夫か?おいっ。涼っつ』

素行不良な悠と間違われて、殴られたと、悠は父親に話した。

『大丈夫だよ。こんくらいじゃ、死なねーから』

『バカがっっ、そういうこと言ってるじゃないんだよっっ!!』

そのまま、疲れて眠ってしまった涼。

目覚めて、キッチンへ降りる。

既に悠が、何か作っていた。

『大丈夫かよ?』

『…だいじょぶだよ』

罰が悪い涼。

『ならいいけど』

悠は朝食を、済ませるとまた部屋へと戻って行った。

僕は謝らない。

助けてなんて頼んでいないんだから…。

勝手に助けて、嘘ついて。

助けた気取りしてる奴なんかに、謝らない。