日曜日。

渋谷の駅で待ち合わせをしていた。

「ごめんなさい!!ちょっと、遅刻しちゃった!!」

バスが遅れていて、待ち合わせの時間を少しすぎてしまった遥。

約束通り、その場所には。

薄いグリーンのセーターに、黒い細身のパンツ。オシャレなサングラスをかけた涼が待っていた。

やっぱり、すごく似てる。

一瞬ドキッとするくらいだ。

「大丈夫ですよ!いや、僕絶対きてもらえないと思ってて…ほんと嬉しくて…」

照れながら話す涼がとても可愛くみえた。

「どこいきますか??」

「映画の前に、なんかたべませんか?」

「そうだね。お腹すいちゃったもんね…」

涼はタクシーを捕まえると、

とある、ホテルのレストランへ悠を誘った。

「え。ここ??」

そこは、有名なホテルの有名なレストラン。

いくらするんだろう…。

「あの、こんなに無理かも。お金持ち合わせてきてないんだ…」

心配そうな遥に、涼は

「僕の気持ちです。兄貴の件もあるし。いきましょう」

涼はウェイターに、なにか話している。

別のウェイターが、高そうなシャンパンをあけた。

ゴールドのシャンパンがグラスに注がれる。

「じゃ、乾杯」

「か、カンパイ…」

「いつも、こんなところ来てるの?」

「いや、そんなことないですよ。やすいところも行ったりしますよ。ここの、最後のデザートのクレームブリュレが、凄く美味しくて。
遥さんにも食べて欲しくて!」

「そっか、じゃあ楽しみ!!」

軽めのランチコースを頂く。

食後のコーヒーを飲みながら、

「全部美味しかったです!どれもおいしかった!!」

「よかった…。また、来ましょうよ…」

絵に描いたような、爽やかなお坊ちゃまのイメージの涼。

絵に描いたような、ぐれてしまったお坊ちゃまのイメージの悠。

「兄貴、どうですか?」

「真面目に勉強してくれてますよ」

「兄貴、頭いいんですよ。俺なんかよりも」

「そうだよね…。わかるよ。あの、彼はどうして留年したの?」

しばし、空気が凍った。

遥は慌てて、いいたくないよね、ごめん、きかなかったことにして!

そう言うと、

「兄貴から、聞いてないんですね?」

遥はゆっくり頷いた。

涼、少しの間天井のほうを見つめると話し始めた。

全て話し終える。

二人のコーヒーは冷めきっていた。

「そうなんだ…」

遥はなんと言っていいかわらず、それだけ言葉にして、冷めたコーヒーを一口ふくんだ。

話し終えた涼もまた、苦い顔をしていた。

「ごめんね、嫌な話させちゃって…」

「いえ」

「あ、映画、行こうか??」

「あの、すみません。ちょっと僕用を思い出して…」

涼は忘れていた約束があるからと、お会計を済ませ、遥を駅まで送ると帰って行った。

余計な話をさせてしまったことを、遥は後悔していた。