「おい。電話なってない?」

遥は悠に言われて、携帯の着信を確認する。

涼だ。

「もしもし?」

『こないだはありがとうございました。今、大丈夫ですか?』

「あ、うん。少しなら」

『あの、今度の日曜日、暇なら。映画とかいきませんか?』

つまりつまりながら涼は、頑張って誘っている。

「あ、映画?」

『いや、遥さんがしたいことあったら、全然映画じゃなくても!なんでも!』

「見たい映画、あるから。それ付き合ってもらえますか?」

電話の向こうで、涼が大喜びしていた。

「涼くんだった」

『ふーん』

「日曜、映画見ようって」

『ふーん』

悠は興味なさそうに、英語の問題を解いている。

なんか、ないの?

遥のこころが、ざわついた。

「行くんだ?」

遥が諦めかけた頃に、悠は口を開いた。

今頃??

「だって、約束しちゃったもん」

「ま、そうだよな。楽しんできて」

なんなの??

それだけを言うために、聞いたの??

遥は、その晩は早めに帰宅した。

一人、アパートへ帰るとその場に寝転がる。

確かに。

悠とはなにもないのだ。

恋人でもなく、友達というわけでもない。

ただ、一度だけ、キスをしただけ。

なんだか、自分だけが悠のことをきにしているようで虚しくなった。

週末は、涼と出掛ける。