美月、ナミが席を立つ頃には、涼と遥はかなり親しくなっていた。

「あの、遥さん」

「はい?」

「兄貴のことは本当にすみませんでした。悪気はないというか、多分、家庭教師として遥さんにきてほしくないというか、そんなところだと思うんです。昔も似たようなことしてたので」

兄をかばう、優しい弟なんだなぁと、遥のなかではこっちのアサダは好印象。

「僕からも、注意しておきますから」

なんども謝る涼に、遥はもういいよと返した。

「それはそれです」

「本当にいいよ。わかったし…」

「…あの、それと」

「ん?」

「…また、会ってもらえないですか?」

翌日。

というか、飲み明かした日の夕方。

080.××××,1234

涼の携帯のかいてある、ナフキンペーパー。

真面目で可愛い子だったなぁ。

ま、今後どうなるかは別として。

さて、やるべき課題をしあげないと。

二日酔いの身体で、ペンケースを、あける。

ボールペン。

ん??

ボールペン。

が、ない。

もしかして。

もしかするかもしれない…。

仕方なく、とりあえず涼へ連絡を取ることにした。

「もしもし?」

「遥さん?」

「びっくり。かかってこないかと思ってました!嬉しいなぁ」

「あの、もしかしてなんだけど、お兄さんのマンションに…」

「そうですか。わかりました。確認して折り返しますね」

涼はすぐに悠に電話をかける。

珍しく、電話にでる悠。

『なんだよ。おまえ俺のこと好きだなぁ…』

向こう側で、呑気に適当な事を言っている悠。

『へぇ。そうなの?ま、あやまっといて。うん。あるよ。あとでとどけてやるよ。はいよ』

その事を遥に伝える涼。

「わぁ、ありがとう!!助かりました!」

『いえ、ま、そういうことなので、近いうちにとどけますね』

「うん。本当にすみませんでした!どうもありがとう!」

とりあえず、みつかってよかった。

が、あのペンがない事が気になって仕方ない遥。

取りに行くか。

いや、やめよう。

でも、あのペンは特別…。

でも、涼が届けてくれるし。

いや、取りに行ったほうが速いし。



ぐるぐるぐる。

ピンポーン