「遥ーっ!」

「美月ー!」

「どうだった?バイト?」

「最悪最低。気分悪い」

親友の美月に昨晩の出来事をざっくりと伝えた。

「へぇ。なんか、何事もなくて良かったね〜」

「だから。あったって!!」

「まあまあ、そっか。でも、大事に至らなくて何より…で、今日、サークルの飲み会なんだけど、K大とT大もくるらしいよ。たのしみぃ」

「へぇ」

そして、また事件は相次ぐのだ。

渋谷のクラブを借り切って、サークルの合コンが始まった。

知らない人だらけの中、遥と美月、ナミはちょこんとテーブルにすわっていた。

ちょっと、イケイケっぽい美月とナミはすでに好みのイケメンを物色していた。

「あの人かっこよくない??」

「あのもよくない??かっこよくない?」

どれ?どれ?

3人は楽しくおしゃべりをしながら

時折混じってくる男子たちともりあがっていた。
「ねぇ、さっきトイレ行った時に多分K大っぽいんだけどチョーカッコいい人いたの。あとでみにいかない??」

「ナミのカッコいいがさっきから当てになってないかんねぇー」

3人は場所を移動して、そのイケメンを探す。

「あの人!いた。あのイスにすわってる、ハットの人」

「どれ??」

美月と遥は、そのイケメンとやらに焦点をあわせる。

薄明かりのなか、ハイチェアに腰掛けて、お酒をゆっくり飲んでいる姿が様になってみえた。

遥の記憶が蘇る。

「ああーーーっっ!!!」

遥の大声に2人が驚く。

「なにぃ??大きな声だしてさぁっ!!」

「美月、あいつ。あいつ。家庭教師の高校生のやつよ!!」

「えー?だって、これ大学のサークルじゃん?」

「確認してないでしょー?だって??」

「本当にそうなの??」

「多分。もう少し近づいたらわかるかも…」

遥があまりにも強くいうものだから3人は少しずつ、彼との距離を縮めて、顔を確認することにした。

見れば見るほど、遥の記憶が一致してくる。

「絶対そうだ…」

「謝らせるか?」

3人は、思い切って、彼のいるテーブルに近づくことにした。

「こんばんわぁ!!はじめましてー!!」

ノリのより美月とナミが悠のテーブルに座った。

「ああ、こんばんは」

「のんでます??なに飲んでるんですか?」

「ジントニック」

悠の周りには3人の男子がいた。

「どこの大学??」

悠の隣の男が遥たちに質問する。

「J大です」

へぇー。Jかぁ。おジョー様じゃーーん。

遥と悠は視線があった。

え??

え????

悠はその後も、素知らぬ顔で遥たちと楽しく会話をつづける。

「名前、なんてよべばいいの??」

「そっちからでしょー?聞くなら?」

遥はあの出来事をなかったことにしている悠にものすごく腹が立ってたっていた。

「あ、ゴメンゴメン!リョウです」

リョウ??

「リョウ?」

思わず口に出ていた。

「そう、さんずいに、京都の京で、涼」

「へぇ…」

遥は、悠が嘘をついているのだと確信した。

3人がとにかく涼のもとからはなれないので、涼の友達たちは、他へ行ってくると席をたってしまった。

「へぇ。涼さんてK大なんだー?」

「どこに住んでるのー?」

「彼女とかいるんでしょー?」

涼にとってはとてつもなく美味しい状況なのだが、その理由をかれは知らなかった。

「ごめん、ちょっとトイレいってくるね」

かれの姿を見送る3人。

「本当にそいつなの??」

「まったく、初めましての感じするけどなぁ…」

「それに、そーゆーことする感じしないんだよねぇ…」

遥も感じていた。

あの日に、強引にキスをして来た感じや、上から目線の話方、態度、ことば使い…。

なんとなく違うひとにも思えたのだが、かおが同じなのだ。

「思い切って聞いてみようよ…」

ナミの言葉に3人は勇気を絞って…。

「あの、貴方、うそついてない?」

「え??」

トイレから戻る涼の目の前には、3人で立ちはだかっている女子軍団。

腕組をし、待ち構えていた彼女たち。

「本当に、私のことわからないの??」

遥も、いい加減にしろとおもいながら、思いきり彼を睨みつけた。

「わ、わからないよ…。何処かであってるの?」

「アサダ、ユウ」

遥はボソッとつぶやいた。

「え??」

そして、数十分。

「本当にごめんなさい。本当に本当に申し訳ないです!!!」

彼の名前は、本当に浅田 涼だった。

身分証明書で確認もした。

浅田 悠は双子の兄だった。

「もーーっ!!遥の人騒がせ!!!」

「本当にだよーー!!」

「ごめん、なさい…」

「いやいやいや!!遥さんたちがあやまらないでくださいよ!本当に、悪いことしてるのは僕のほうだから、っていうか、うちの兄のほうだから…」

ややこしい。

「でも、3人がすごい詰めてきたとき、なんなのか凄く不思議だったけど…誤解でよかったです。ってか、誤解ではないか…」

程なくして4人は打ち解けて、呑み明かすことができた。