大翔の抱き方は、聡士と違って優しい。

その違いは何だろうと考えたら、大翔はとにかく私の反応を気にしている事に気付いた。

聡士は、自信たっぷりな抱き方で、甘い声を漏らすたび、“当然だろ”という心の声が聞こえてくる様だった。

だけど大翔は、その声を聞く度にホッとしている気がする。

だから、優しく感じるんだわ。

「今夜の由衣は、何だかいつもと違うな」

息を荒くしながら、大翔がそう言った。

「そうかな…。まだまだ、足りないよ大翔」

もっと、もっと抱きしめてよ。

付き合っていた頃の、不安なんて一度も感じた事のないあの時の様に…。

「由衣…」

「大翔…」

こんなに、強く抱きしめ合っても足りない。

何を埋めたいのか、そんなものすらないのか全然分からないけれど、でも満足が得られない。

「明日、早く帰って来てね大翔」

「ああ、なるべく早く帰るから」

唇を重ね合いながら、頭を巡るのは一香の事ばかり。

友達として大事にしたい気持ちと、嫉妬心とで苦しい。

お願いだから一香、大翔にまで手を出さないで。

聡士だけで十分でしょ?

お願いよ…。

その夜、大翔はどこかへメールをしていた。

私が寝た振りをした後に、2回やり取りをしていたのだった。

それが誰だか分からない。

一香なのかもしれないし、違うのかもしれない。

どうして、今さらこんな不安を抱かなければいけないの?

やり直したいと言ってくれた大翔の言葉に、嘘はないよね?

信じていいよね…?

結局、その夜は眠れなくて、いつの間にか夜が明けていたのだった。