亜子もだけど、この人もどうしてこんな意味深な言い方をするのだろう。
私には、そっちの方が不思議だ。
「さあ?あんまり考えた事がないけど」
話してくれないなら、“何で?”って思うだろうけれど、話してくれる事を深く考えないといけないのだろうか。
たいがい面倒臭くなった時に、琉二は言ったのだった。
「みんなで出来るだけ、頻繁に会おうよ。そうすれば分かると思うよ」
「どういう事?」
「そういう事。俺は由衣と純粋に友達になりたいから、よろしくな」
ニヤッと笑った琉二は、それ以上話には触れなかった。
さらに、店にも到着し、二人で話すチャンスはなくなったのだった。
一緒にいれば分かるって、どういう意味なんだろう。
大翔が私との事を友達に話すのが、そんなに意味の深いものなの?
一体、みんなにはどんな事情があるというのよ。
深く関われば関わるほど、分からなくなる事ばかりだ。
だけど琉二は、いろいろな事を分かっている様にも見える。
だったら、意地悪しないで教えてくれたらいいのに。
まさか、一香が関係しているんじゃないよね?
もうたくさんよ。
一香に振り回されるのは…。
小さくため息をついた時、
「ここだよ~」
店内の座敷で、一香が手を振っていた。
私と琉二は二人、どうやら遅れていたらしい。
「話が盛り上がってた?」
「うん。まあね」
なんて言ったけど、盛り上がるどころか、盛り下がる一方よ。
1メートルほどのついたてで仕切られた座敷は、テンションマックスのグループで騒がしい。
学生や社会人の男女混合グループがほとんどだ。
店内にはカウンターとテーブル席もあり、そこはカップルがほとんどだった。
「ここ、よく来るの?」
店自体の存在も知らなかった私は、誰ともなしに聞いてみた。
すると、琉二が速攻で返事を返してくれたのだった。
「たまにな。最近は久しぶりだけど」
「そうなんだ」
自然と席の位置は、私と一香が隣で、聡士と琉二が隣同士になっている。
そして、私の目の前は琉二だ。
初対面でも、こんな気軽に話す感じは聡士そっくり。
「それより、大翔も来たかっただろうな」
お通しが運ばれ、メニュー表を眺めていた時、琉二がまるで独り言の様に言ったのだった。
「きっとね。でも、仕事柄、週末は忙しいもんね」
てっきり私が返事をする内容だと思い、軽く返したものの、聡士と一香はまったく話に乗ってこない。
むしろ、触れたくないといった感じだ。

