「大翔、また会いたい。仕事以外で…」

「俺もだよ。それより先に会えるのは、明日の午後か」

そうだ。

明日は大翔と打ち合わせのアポを取っていたんだった。

「聡士と来るんだろ?」

「うん」

こうなると、聡士と一緒に仕事をするのは憂鬱だ。

だけど、仕事仲間と割り切るいいチャンスかもしれない。

「明日の夜なら会えそうなんだ。会わないか?」

「うん。会いたい…」

付き合っていた頃の私たちを思い出そう。

やっぱり幸せは、大翔の側にあるのかもしれない。

「電話が切れないな」

小さく笑いながら、大翔はそう言う。

「うん…。二年も時間が空いていた気がしないよ。大翔と話すと、いつだって自然だから」

「俺も。こうやって、由衣の声が聞けるのが夢みたいだ」

「大翔…」

付き合っていた頃から、こうやって大事にしてくれたよね。

いつだって優しくて、私の事を考えてくれていた。

会える日が楽しみで、会えた時は幸せで…。

その毎日を、もう一度取り戻そう。

「それじゃ由衣、おやすみ」

「うん、おやすみなさい。明日が、楽しみ」

そう言って電話を切った。

今夜は、大翔の思い出を抱いて眠ろう。

聡士は、きっと一香を…。

ダメダメ、考えてはいけない。

私は大翔を考える。

大翔の事だけを考えるんだから。

そしてベッドへと入った時、メールが届いたのだった。

それは大翔からで、''おやすみ''のメールだった。

そのお陰か、その夜見た夢は、別れる前の幸せだった私たちの夢。

大翔を、大翔だけを好きだった頃の…。