「え…?大翔って、由衣の元彼だったの?」

呼び捨てにするくらい、一香は大翔とも仲が良かった。

一香と知り合ってから長く経つのに、どうして今頃になってこんな繋がりを持つのだろう。

「やっぱり、知ってるんだね。聡士と友達だから、一香とも知り合いかもと思ったけど…」

「知ってる。飲み会で集まる常連メンバーだし」

「そっか…」

大翔は学生の頃から、私に友達を紹介はしてくれなかった。

それを付き合っていた頃は、あまり気にしていなかったのに、今になって私の知らない大翔が見えてくる。

聡士だけでなく、大翔も遠い存在に思えてきた。

「由衣から彼氏の名前を聞かなかったもんね。大翔もさ、プライベートの話は全然しないから…」

「やっぱり。私にも、友達の話は昔からしなかったのよ」

もし知っていたら、どうなっていたんだろう。

当然、聡士と私は学生時代からの知り合いになっていたはず。

“友達の彼女。彼氏の友達”

そういう関係になっていただろうけれど、一香より先に知り合っていた事には間違いない。

それでも今みたいに、聡士に惹かれていただろうか?

「ごめんね由衣。軽々しい気持ちで聡士を紹介して」

電話の向こうの一香は、少し落ち込んでいる様だった。

「ううん。偶然が重なり過ぎたのよ」

「大翔との事は応援する。これからは由衣も、集まりにおいで」

「えっ!?」

「大翔とも頻繁に会うんだよ。琉二も紹介したいし」

琉二?

そういえば初めて聡士と一香の三人で会った日、その名前が出ていた気がする。

「琉二は、本当にいい奴なの。恋愛抜きで接する事が出来るから、気軽に来て」

「う、うん…」

大翔が連れて行ってくれるのか分からないけれど、何だか急に周りが変わっていく気がした。

「ねえ一香、聡士の事は一香が真剣に考えてあげなよ。諦められないんでしょ?一香の事が…」

「うん…」

自分が諦めたくて、あえて一香にそう言ったら、力無い答えが返ってきた。

これでようやく、聡士から縁が切れるんだ。

これで、いいんだ…。