亜子は私が話している間、黙って聞いていた。

聡士との関係、思わぬ大翔との繋がり。

そして、一香の事。

今の自分の気持ち。

どの話しをしても、表情一つ変える事はなかった。

そして話し終えると、亜子は深いため息をついたのだった。

「個人的な意見。私はそういう関係に反対だわ」

「やっぱり…?」

それはそうに違いない。

もし、自分が客観的な立場で聞いたら、同じ事を言っていたと思う。

想像が出来ていた答えだけれど、実際に言われるとショックなものだ。

「だけどね…」

力を落とした私に、亜子はこうも言ったのだった。

「由衣の気持ちを考えたら、簡単に止めろとは言えない」

「え?」

「だって、惹かれているんでしょ?彼に」

「う、うん…」

好きかどうかまでは、正直分からない。

それに自分の中で、その気持ちを抑えようとしている気もする。

「だったらさ、堂々と一香から紹介を受けたわけだし、しばらく体の関係は抜きにして聡士くんと接してみたら?」

「あ…、そうか。そういう風にすればいいんだわ」

なんだか、学生に戻ったみたいだけど、そんな新鮮な付き合いも悪くないかもしれない。

「だって、もっと冷静に彼を見ないと、今のままじゃ流されてる感じ」

「そうだよね。亜子の言う通りよ。やっぱり言ってみて良かった」

いつだって、冷静な答えをくれるのだもの。

一香とはまた違う魅力を、亜子には感じる。

「それにしても、一香も一香よね。普通自分と関係ある人を、友達に紹介する?」

「ハハ…」

それは、亜子には到底理解出来ない事だろう。

だけど、私には分かる。

一香の苦しいくらい、聡士を想う気持ちが。

だからこそ、私に紹介したかった事も。

「だけど、由衣は平気なの?一香と関係ある人となんて」

同期の中でも、一香と亜子は仲が悪かった。

だから、余計に亜子は心配しているのだろうけど…。

「気にしないと言えば嘘だけど、27年も生きていれば何かあるのが当たり前よ」

少し距離を置いてみよう。

亜子と話しをする内に、そんな前向きな考えが戻ってきていたのだった。