冷静になってみれば、聡士と一香が知り合いでもおかしくない。

一香が私に紹介したがっている“男友達”。

確か、久しぶりに地元に戻ってきたと言っていなかった?

それに一香と会ったイタリアンの店…。

偶然と言われればそれまでだけど、聡士と行った時、知り合いから教えてもらったと言っていた。

その相手が一香なら、私を一香があの店に誘った意味も分かる。

一香の好きな店とか…?

そして何より香水。

聡士のベッドから薫る匂いと同じものを、一香もつけていた。

その上、ネックレス…。

まさか、まさか…。

二人は知り合い?

どれくらい深い関係なの?

その場に呆然と座り尽くしていると、

「由衣?どうした?」

聡士が重そうな目を開けながら、私に声をかけてきた。

「あっ、ううん。何でもないよ」

とっさにネックレスを、バッグに入れる。

「何だよ。また勝手に帰るのかと思った」

ベッドから降りた聡士は、下着一枚で後ろから抱きしめてきた。

もし、ネックレスを見つける前なら、それも嬉しかったけれど、一香が頭をよぎって上手に甘えられない。

いつしか夜を過ごした時にかかってきた携帯、あれは一香だったのかもしれないと、思ってしまっていた。

「帰らないよ…」

一香との約束は今週末。

その時には、何もかも分かるのだけれど…。

もし、その人が聡士だったら?

普通に接する事が出来る?

「由衣…」

聡士は私を振り向かせながら、当たり前の様にキスをしてきた。

このキスに、意味を求めるなんて間違っている。

だけど、何かが狂い始めていくのが分かった。

「もっとキスして…」

「言われなくても、してやるよ」

痛いくらい抱きしめられながら、私たちは何度も何度もキスをした。

この気持ちを、どう表現したらいいのだろう。

好きではない。

だけど、失いたくない。

もっと、もっと私を求めて欲しい。

そう思う気持ちは、何と言えばいいの…?