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あっという間に新しい年が明け、その間一度も聡士と抱き合う事はなかった。

仕事納めの日も、課全体での打ち上げはあったものの、二人きりになる事もなく、連絡を取り合う事すらなく、気が付けば新年の仕事始めを迎えていたのだった…。

「久しぶり!由衣。やっと会えたじゃん」

新年最初の仕事終わり、私が会ったのは聡士ではなく一香だ。

「久しぶり。ごめんね。年末には誘ってくれたのに」

待ち合わせのイタリアンの店に駆け込むと、変わらない一香が愛想良く手を振ってきた。

偶然にも、ここはいつか聡士とランチをした店だ。

それだけでも、どこか緊張してしまう。

「いいよ気にしないで。忙しかったんでしょ?それより由衣、何か変わった事あった?」

ニヤっとした笑いに、それが“彼氏出来た?”を聞きたいのだと分かる。

「何にも。悲しいくらいに独り身よ」

とても聡士の事は話せそうもない。

一香も自由奔放な性格だから、私の行為に嫌悪感を抱いたりはしないと思う。

だけど、それを話す事で、私の心の底を見透かされるのが嫌だった。

「そうなの?じゃあさ…」

「何?」

こんな風にもったいぶる時は、大体…。

「紹介したい人がいるんだけど」

ほら、やっぱり。

交友関係の広い一香は、時々こんな風に話を持ってくる。

今までは乗り気がしなくて、毎回断っていたけれど…。

やっぱり今回も乗り気がしない。

あからさまに、けだるそうな顔を一香に向けると、向こうも負けじと応えてきた。

「あのね、久しぶりに地元に戻ってきた男友達なのよ。カッコイイんだって!」

「ふぅん…」

いつも思うけれど、そんなにいい人なら、自分が付き合えばいいのに。

「じゃあ、一香が付き合ったら?彼氏いないんでしょ?」

「私は嫌なのよ。いろいろあってさ。それよりお願い!会ってくれない?」

「しつこいなぁ」

一香が両手を合わせて懇願する振りをした時、覚えのある香りがした。

「あれ?一香、香水をつけてるの?」

この匂い…、聡士のベッドから匂ってきたものと同じじゃない…。