こんなに夜を待ち遠しいと思ったのは、どれくらいぶりだろう。

聡士とは午後から別行動で、夜まではずっと会えずじまい。

だから、何時にどこで待ち合わせをするかとか、そんな話が出来ないままだったからだ。

「ここが俺んち。ただのアパートだけどさ」

苦笑いの聡士に連れられて来たのは、約束通りに彼の家だった。

社外で待ち合わせをした私たちは、外で軽く食事をし、ここへやって来た。

2DKのごく一般的な洋風のアパート。

二階建ての二階角部屋で、モノトーンの家具でこざっぱりとしつらえられている。

「男の人の一人暮らしの割には、キレイなのね?」

思わず、室内を見回しながらそんな言葉が出ると、聡士は少しムッとした。

「俺だってキレイ好きなんだよ」

「ごめん、ごめん。深い意味はないのよ」

確かに、仕事の出来る人だから、プライベートの場所もキレイに出来るのかもね。

そんな、自分なりの考えを頭に巡らした時、

「それより、もっと楽しい話をしようぜ」

聡士は私の腕を引っ張ると、自分の方へと引き寄せた。

変わらないこの香水の香り…。

どこかこのシチュエーションを懐かしく感じた時、

「由衣…」

聡士が唇を重ねてきたのだった。

「な、なんか…いつもより…」

絡み合う舌が痛いくらい、今日の聡士はどこか激しい。

「いつもより何?」

一瞬の隙をついて、聡士は言葉を発するけれど、またその唇は私のへと重ねる。

部屋中に、唇の重なり合う音と、私の乱れた息遣いだけが響いていた。

「いつもより、激しいよ…」

「それは、早く由衣を抱きたかったから」

そう言うと、聡士はベッドへと私をそのまま押し倒した。

毎日、聡士が使っているベッド…。

この場所にも、いつもの香りが…。

と思ったのに、倒された先の枕からほんのり匂ったのは、違う香りだった。

甘くてまるで花のような匂い。

これは、誰の匂い…?