「ピンクダイヤだなんて、聡士もやるじゃない」

電話越しに、一香の笑い声が響く。

「ピンクダイヤって、愛とかそういう意味があるって聞いてビックリしちゃった」

亜子に報告した時に、”何てロマンチックなの”って言われたのだった。

「そう。のろけをご馳走さま。それにしても、由衣が元気そうで良かった」

聡士が出発してから三か月。

何とか毎日を乗り切っている。

「うん。けっこう、向こうで評判がいいみたいで、こっちでも噂がきているのよ。それだけでも安心」

さすが聡士だけあり、アメリカでの評価は上々らしい。

「噂?連絡は取り合ってないの?」

「お互い仕事がある上に時差でしょ?メールのやり取りが精一杯よ」

それすらも、週に一回あればいい方だ。

「それじゃ寂しいわね」

「大丈夫」

その為にあるのだもの。

この左手薬指の指輪が。

「そうだ。聡士に連絡した時に、頑張ってって伝えておいて」

「え?それくらい、一香から言ってくれていいのに。遠慮しなくていいんだよ?」

「ううん。違うの。あいつ、携帯の連絡先変えたでしょ?私には教えてくれていないのよ」

「ええっ!?」

アメリカへ発つ前、聡士は携帯を変えていた。

てっきり、一香にも伝えていると思っていたのに…。

「聡士に言っておこうか?連絡先教えてって」

「いい。あいつなりのケジメのつけかただと思うの。由衣に変な心配をさせたくないのよ。私とあいつは、もう個人的なやり取りは出来ないから、由衣も絶対に不安にならないでね」

「うん…」

そうだったんだ。

聡士はそんな思いを持ってくれているんだ。

それにしても、一香と連絡先を断つって、よほどの覚悟だったんだろうな。

「早く会えたらいいね」

一香はそう言うと、電話を切った。

「本当、いつ会えるのかしら」

薬指の指輪を見つめながらため息をついた時、再び携帯が鳴った。

「ん?」

一香が、またかけてきたのかな?

携帯を見ると、”聡士”の名前が出ている。

「聡士!?」

慌てて出ると、懐かしい声がした。

「由衣、何だよ慌てて」

携帯の向こうで、笑われてしまった。

「だって、久しぶりなんだもん」

ああ、懐かしい声。

ずっとずっと聞きたかった声だ。

「由衣、元気だったか?」

「元気よ?聡士は?」

「俺も絶好調。ただ、由衣が居ないのは寂しいけどな」

良かった。

声だけで、本当に元気なのが分かる。

やっぱり安心する。

声を聴くと。