「由衣!」

その瞬間、聡士はいつも以上に強く抱きしめてきた。

痛いくらいに…。

でも、その力に聡士の想いを感じる。

思えば聡士と一香は今まで、報われない恋心にずっと苦しんでいたんだ。

それなのに私は、ずっと自分が一番、悲劇のヒロインだと思っていて…。

聡士から、見えていないと言われても仕方がないかも。

「聡士、痛いよ…」

「だって、やっと手に入れる事が出来たんだ。好きな女を。簡単に離せるかよ」

「聡士、約束するから。私は絶対に離れないって」

だから、ずっと私を好きでいて。

一香を好きだったことすら忘れるくらいに。

「由衣、俺も約束する。一生を懸けて、俺が好きなのは由衣だけだと…」

そう言って聡士は私を少し離し、そしてキスをした。

もう、愛のないキスじゃない。

疑わないといけないキスでもない。

正真正銘、お互いの気持ちを確かめ合うキスだ。

「もっと、息も出来ないくらいのキスをして…」

「してやるよ。キスだけじゃなくて、息も出来ないくらいに抱いてやるから」

抱きしめ合う温もりは、ずっとずっと欲しかったもの。

大翔とじゃ、掴めなかった気持ち。

もう迷いはなくて、ただ好きという気持ちだけに素直になれば良くて…。

こんなに幸せを感じられるのは初めて。

「聡士、何でじらすの?じれったいよ…」

素肌と素肌で抱きしめ合いながら、甘い声だけを漏らす私を、聡士はどこか楽しそうに見ている。

余裕をかましてくれるんだから…。

「だって、やっと心底想い合って抱けるんだからさ、もうちょっとじらそうかなって…」

「もう、ずるい。さっきは息も出来ないくらいに抱いてくれるって、言ったのに」」

それでも、体を這う聡士の指で、息なんてとっくに出来なくなっている。

それを見透かしてか、意地悪く聡士は言ったのだった。

「十分、満足そうじゃないか」

「私はね…。でも、聡士は全然満足そうじゃないよ?」

「え?」

「息がまったく切れていない」

ねえ、聡士。

私ね、聡士といると自分らしくいられるって気付いたの。

時々は可愛い事も言うから、愛想を尽かさないでね。

「今度は私の番。じらせないくらいにしてあげる」

聡士を押し倒し返し、驚くその顔にキスをする。

こんな甘くて楽しくて、そして幸せな夜を過ごせるなんて思ってもいなかった。

聡士と過ごせるなんて…。

なんて幸せ。