「キーってどういう事?」

そういえば、亜子も似たような事を言っていたような…。

一体、私が何だというのよ。

「だから、教えて。お前は誰が好きなの?」

「…分からない。正直、分からないの。大翔は元々、彼氏だった人よ?嫌いで別れたわけではなかったし、再会して気持ちが揺らいだのは確か」

「だけど、大翔って言いきれないんだ?」

琉二の問いかけに、小さく頷いた。

「やっぱり、聡士に会うとときめく自分もいるし、流される自分もいるから…」

こうやって話していると、私って最低だなと思う。

一香へ恨み言を言っても、まるで説得力がない。

すると、琉二は小さく微笑んで言った。

「だから、みんな振り回されるんだな。由衣の気持ち次第で、みんな楽になるんだけどな」

「だから、それはどういう意味なの?」

琉二は含みのある言い方をするから、意味が理解し辛い。

「気付かないか?聡士も大翔も、由衣が好きだってことに」

「えっ!?」

そんなバカな…。

「待って。大翔はともかく、聡士が好きなのは一香のはずよ?」

そう言うと、琉二はニヤっとした。

「何だ。由衣も知ってたんだ」

「あ…」

うっかり口を滑らしたけれど、もう隠しても仕方がない。

こうなったら、正直に話そう。

「知ってるの。二人に体の関係があることも、この間の飲み会でキスをしていたのも見たし…」

「だから、聡士が好きなのは由衣であるはずないって事か」

「そうよ。それに、一香も聡士が好きだと言っていたのよ?でも、友達関係でいたいと言っていた」

それなのに、聡士が私を好きと言われても、何を根拠に信じろというのだろう。

「本当は、俺が言う事じゃないけどさ…」

一呼吸置いて、琉二は言った。

「聡士は確かに一香が好きだった。それもずっと…。だけどあいつは、もう一香を諦めたくて必死だったんだよ」

諦めたいなんて、そんな風には見えないけれど…。

と思って、ふと思い出した。

いつだったか、聡士が抱いてくれた夜、朦朧とする意識の中で聞いた言葉。

“忘れさせて”

あれは、そういう意味だったの…?