「私が知りたい事?」
ふと、以前に亜子が言っていた言葉を思い出す。
琉二は、みんなの事情を知っているのではないかという内容だった。
あの時は半信半疑だったけれど、この言い方だと本当かもしれない。
「そう、知りたい事。もう、いい加減辛くないか?」
「え?」
どうして、そう思うの?
それを言う前に、琉二が言ったのだった。
「聡士も大翔も、それに一香も辛そうなんだ。由衣だけが平気なわけないもんな」
「ちょっと、待ってよ。何の話なの?まったく、意味が分からない」
みんなの名前が出てきて、自分でも動揺しているのが分かる。
「じゃあ、ちょっと付き合ってくれないか?ちゃんと話をするから」
琉二はそう言って促すと、大通りのカフェへと私を連れて行ったのだった。
一体、何を話すというのだろう。
休日のカップルで賑わっていることすら気にならず、琉二に連れて行かれるまま店へ入ったのだった。
「ここのカプチーノはお勧め」
「そんな気分にはなれないよ」
のんきにコーヒーなんて飲んでいる場合ではない。
だけど、琉二はカプチーノを2つ注文したのだった。
「私、いらないんだけど」
「コーヒーが苦手?」
「そうじゃないけど、飲む気になれないの」
苛立ったように言うと、琉二は小さく笑った。
「聡士が好きなんだぜ?ここのカプチーノ」
「え?」
「ほら、また一つ知っただろ?俺と一緒にいるのも、悪くないと思うけど」
呆れて言葉も出ない。
やっぱりどこか、聡士と性格がかぶるのよね。
小さなトレーを持ち、琉二は空いているソファー席へと向かった。
「これ、カプチーノ代」
財布から小銭を出すと、琉二に差し出す。
「ああ、いらないよ。無理に付き合わせてるんだから」
「それとこれとは違うわよ」
こんな事で、後から恩着せがましいことを言われても嫌なんだけど。
だけど、琉二はそれを受け取らず、カプチーノを私の前へ置いた。
「なあ、由衣はどっちが好きなんだ?聡士と大翔」
「どっちって…。何で二人に限定されるわけ?」
飲んでみようと手に持ったカップを、危うく落としそうになる。
「言いたくない気持ちは分かるけど、こっちも話すから、由衣も気持ちを教えてくれないか?」
まさか、この手で聡士たちの気持ちも聞き出したのだろうか?
だけど、どうして琉二にそこまで話す必要があるのだろう。
どこか納得出来ないでいると、琉二はさらにこう言ったのだった。
「由衣の気持ちがキーなんだよ」