風が止むときは、ウィンデーネが死んだとき。
 そして、新たなウィンデーネが生まれるとき。

 ウィンデーネが死ぬときは、風が足を止めたとき。
 使命を果たせなかった風が、空に消えていくとき。


 これから紡がれるのは、叶わぬ恋に身を焦がした、一人のウィンデーネの物語。





 風の、恋歌 ~こいうた~





 この世界に生まれたときのことは、よく覚えている。
 一緒に駆けるウィンデーネ達も、口をそろえて同じことを言っていた。

 「声」を聞いたと。

 空っぽの私は、突然そこに生まれた。
 それは本当に唐突で、気づいたらそこに生まれていた。

 何をすればいいのかもわからない私に、答えを教えてくれたのは「声」だった。

 暖かくて、確かな「声」が、告げた。

「駆けろ、己の命が尽きるまで。
 運べ、全ての命を息吹かせるもの。
 お前はこの世に生を受けた、ウィンデーネだ」

 その声を聴いた瞬間、何もかもを悟った心地になった。