言葉が出ないと気づいたのは、沙耶が家に来てくれたとき。 「どうしたの? 陸上部のみんなも心配してたよ」 ごめんね、ありがと。 しゃべったはずなのに、沙耶は何も言わない。 聞こえないの? 「…深空? どこみてるの?」 いつのまにかあたしは、焦点すら合わなくなったのか。 「………」 ―帰って。 仕方なくあたしは紙に書いた。 「深空…」 あたしは確実に、おかしかった。