とっさにその人影に駆け寄り
細い背中に手を伸ばす

「おい!」

声をかけたが反応は無く
ブレイクの腕の中に落ちるように
その人は仰向けに倒れ込んだ

ブレイクはその姿に思わず絶句する

透き通る様ななめらかな象牙色の肌に
黒々と輝く腰まである長い髪
伏せられた瞼は切れ長で
薄い唇は乾燥し血がにじんでいる

その姿は雪乃とは違うものの
明らかに同じ人種であるという事を物語っていた


「まさか…本当に来ていたとは。」


驚きながらも
彼女を抱き抱え手当の為に宮に戻ろうと踵を返した時

『ブレイク』


ふと後ろから呼ばれた様な気がした


振り返るがそこにあるのは母の墓標だけだ

なんだ?気のせいか?

気を取り直して正面を向こうとしたとき

墓標に添えられた小さな花束が視界に入った

まだ新しいそれは今朝積んだものであろう
美しい色合いがしっかり残っている


「…お前が母の墓標に花を供えたのか?」

聞いてみたところで彼女からの返事はない