あれからしばらく待っても川西さんからの電話は来なかった。夜になり、昼間の着信で伝言が入っているのに気付いた。間違い電話と思われないために残していったのかもしれない。彼女の思いの強さを実感して嬉しくなる。どんなメッセージを残しているのだろう。


メッセージセンターへダイヤルし、携帯を耳に押し当てる。川西さんの声をよく覚えていないことに気が付いた。無理もない。合コンではまともに彼女と話してない上、彼女自身あまり話さなかったのだ。一ヶ月ぶりに聞く彼女の声に神経を集中する。


全身が総毛立つかと思った。


聞こえてきたのは野太い男の声だった。
『タカヒロです。お疲れ様です。昨日はありがとうございました。また行きましょう。それでは失礼いたします』


携帯を握ったまましばらく放心していた。なんてことだ。この一ヶ月間、もどかしいやらじれったいやらの思いで、何度番号を見つめてため息が出たことか。それが間違い電話、しかも得体のしれない男だったなんて。


それにしてもこの男、一ヶ月の間電話のかけ間違いに気がついていないとは。おかげで無駄な時間を過ごしてしまった。