抱きしめてくれる大きな肩や、手の平の温もりが大好きだった。


父は、酷く取り乱していた。

抱きしめる力が強かった。


それもそうかもしれない。



母さんとあんな言い合いをしたのも初めてだった。

黙って家をでたのも初めてだった。



こんな父を、僕は初めてみた気がする。



「ごめんなさい」


「いいんだ・・無事だったから。」



父は普通に家に入れてくれた。


そういえば、父が僕を迎えにきてくれたのは初めてかもしれない。


母さんには会わずに、父さんの書斎に連れていかれた。



「吟」


「何?」


「吟には、父さんの宝物を見せてあげよう。」



父は、鍵の着いた引き出しから一つの箱を取り出した。


それは、大分古くなった大きなノートほどある大きさで、深さも中々だった。



「開けてごらん。」