だが、黒曜にその気はなかったらしい。
深い溜め息を吐いて、鬼気を収める。
「そりゃ、残念ながら俺じゃない。
紅玉は捨てた男をいつまでも引きずってるような、センチな女じゃねぇだろ。」
「え?」
頭、真っ白。
コイツじゃねーの?
紛らわしいな、おい。
俺、ナニ悩んでたの?
いやいや、じゃ誰なの?
他にも強敵がいるンデスカ?
勘弁してよ。
心臓もたねーよ。
でも、それより…
「アンタ… 捨てられたの?」
「…
昔な。
『もう、そなたを愛せぬ』とか、ザックリ。」
黒曜は痛そうに口をひん曲げながらも、景時の問いに答えた。
聞いた景時も、彼と同じく痛みに耐えるように顔を歪める。
(キっツ…)



