赤い月 肆


だが、黒曜にその気はなかったらしい。

深い溜め息を吐いて、鬼気を収める。


「そりゃ、残念ながら俺じゃない。
紅玉は捨てた男をいつまでも引きずってるような、センチな女じゃねぇだろ。」


「え?」


頭、真っ白。

コイツじゃねーの?
紛らわしいな、おい。
俺、ナニ悩んでたの?

いやいや、じゃ誰なの?
他にも強敵がいるンデスカ?

勘弁してよ。
心臓もたねーよ。

でも、それより…


「アンタ… 捨てられたの?」


「…
昔な。
『もう、そなたを愛せぬ』とか、ザックリ。」


黒曜は痛そうに口をひん曲げながらも、景時の問いに答えた。

聞いた景時も、彼と同じく痛みに耐えるように顔を歪める。


(キっツ…)