担任教諭の佐々木剛を待ってホームルームを終えれば、楽しい放課後突入という時間、青ざめたうさぎが、薫のブレザーの袖をそっと引いた。


「薫…
景時が病んでおる…」


「へ?」


ヤんでる、て。

薫は机に突っ伏して寝ている様子の景時をチラリと見て、声を落としてうさぎに問うた。


「どーヤんでンの?」


「夜、帰ってからも、昼に起きてからも、妾の顔を見て同じ言葉を繰り返すのじゃ。
今も…寝てはおらぬぞ。
傍へ行ってみよ。
聞こえる‥‥‥」


うさぎは身を震わせて目をギュっと閉じ、耳を塞いだ。