赤い月 肆


うさぎはなんとか身体を半回転させ、かなり高い位置にある黒曜の顔を見上げる。


「黒曜…」


「…
なんだ。」


「確かに景時は軽率であった。
だがあの者は、妾の為に単身敵地に向かったのじゃ。
妾には、そのような阿呆を放っておく事など出来ぬ。」


「…
だから、もう手遅れだって」


うさぎは黒曜の言葉を遮るように、強く首を左右に振った。

自分を包む腕をギュっと握りしめ、もう一度黒曜の瞳を覗き込む。


「景時は簡単にくたばるような男ではない。
きっと、生きておる。」


「…
死んでるって…
そんな顔すんなよ。」


「生きておる…
きっと…
行かせてくれ、黒曜…」


「…


あ────────っっ!!」