赤い月 肆


そんなヤバいのが相手なら、なおさら早く行ってやんなきゃ。


「うさ
むぐっ」


蒼白になって言葉を紡ごうとした薫の口を、白蛇の手が塞いだ。

暴れる巨体をいとも簡単に押さえつけ、薫の耳元で色っぽく囁く。


「黙っとき。
おもろいモン見れンで。」


「む?」


(おもしろがってる場合じゃねーンだケド?)


釈然としないまま、それでも薫は暴れるのをやめて二人の鬼神を見上げた。


「は… 放せ、黒曜。
そもそも、何故そなたが此処におるのじゃ?」


うさぎは渾身の力でもがいているようだが、黒曜はビクともしない。

同じ鬼神とはいえ、力の差があるのだろう。