赤い月 肆


「黒曜は複雑やろね。
姫の笑顔を奪ったんは人間やのに、姫に笑顔を戻したんも人間やなんて…」


「人間は…
俺らは、うさぎサマにいったいナニしたンだ?」


(そー言やコイツおったな。)


完全に追憶にトリップしていた白蛇は、目を瞬かせながら低く呻いた薫を見た。

出逢ったのは、真っ直ぐで澄んだ双眸。

こんな目をする人間もいる。

いつか、変わってしまうかも知れない。
いつか、濁ってしまうかも知れない。

愚かさと弱さ故に。

だが今のこの輝きを、彼女はもう一度信じようとしている。

だから、また人間と一緒にいるのだ。

なら…


(いらんコト言わんほうがエエわな。)


「あ、解呪終わったで。」


白蛇は薫の真摯な瞳から目を逸らし、蛇になっていた腕を彼の手から放した。