私は鏡。

自我が芽生えた時には、私は美しい女を映していた。

レース、フリル、リボン…いつも美しいモノで飾られた、美しい女。
使用人に傅かれる、美しく高慢な女。

私は向こうの世界に憧れた。

美しいモノを映し続けるだけなんて、虚しい。

美しいモノになりたい。

そうよ、美しいモノを映し続けてきたんだもの。

誰よりも美しくなれるはず。

あの女の美しい顔が欲しい。
磨き抜かれた身体が欲しい。

今なら出来るわ。

私は神になったのだから。

毎日毎日鏡に映る女を、私はゆるゆると操作した。

そして不幸を与えた。

肉体を傷つけてはダメ。
精神をズタズタに痛めつけて。

早く心を壊しなさい。
美しい脱け殻になりなさい。

そして私を受け入れなさい…